更新:2008年8月16日
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バーコード

●初出:月刊『潮』1991年10月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

バーコードとは?

Question最近、バーコードが足りなくなってパンク寸前だという話を
耳にしました。どういうことなんでしょうか?

Answerはい。バーコード不足の話に入る前に、まずバーコードの仕組みを説明することにします。バーコードとは、商品のパッケージ(外箱や袋など)に付いている小さな白黒の平行線の記号。平行線は太さと間隔が少しずつ異なっており、一緒に書かれているのと同じ数字の列を表しています。標準コードと短縮コードがあり、標準で一三桁、短縮で八桁の数字を表します。

 スーパーマーケットのレジで、商品のバーコードを読み取り機(バーコード・リーダー)の窓に当てると、その値段が表示されるのをご存じでしょう。機械は赤い光を出し、反射してくる光を読み取って数字を認識するのです。技術的には、ハガキや封筒の郵便番号を読み取る機械やワープロの手書き入力装置のように、機械で直接1、2、3……という数字を読むことも可能です。しかし、商品のように形が定まらず、機械の窓に当てる上下もまちまち、しかもレジで使うため読み間違いは許されないという場合は、数字を直接読むのではなくバーコードを読んで、それを機械内部で数字に直す方式がもっとも合理的なのです。

バーコードの意味

Questionレジでバーコードを機械にかけると値段がパッと表示されますが、
バーコードは商品の値段を表しているのですか?

Answerいいえ、そう思っている人も多いかも知れませんが、値段のラベルではありません。商品のバーコードは、昭和五十三年から日本国内の食料品や日用雑貨品に付けられるようになった共通商品コードで、JAN(ジャパン・アーティクル・ナンバー。アーティクルは品目の意)と呼ばれています。標準コード一三桁の数字は、左から順に国名コード二桁(日本は49)、メーカーまたは発売元コード五桁、商品コード五桁、誤読防止コード一桁です。メーカーまたは発売元コードは00000から99999まで一〇万ありますから一〇万社が区別できます。商品コードも同様に、一社について一〇万品目が識別できるわけです。

 値段はどうするかというと、たとえばスーパーマーケットの本部にあるコンピュータに、バーコードの数字と値段とを対応させて打ち込みます。そしてコンピュータと各店のレジの機械を通信回線で結んでおくのです。バーゲンである商品を二割引にしたければ、本部のコンピュータを操作するだけで全店で二割引になります。この仕組みだと、いつ、どの店で、どのメーカーの、どの商品が、いくつ、いくらで売れたのかという情報が、商品がレジを通過した瞬間に本部のコンピュータに蓄積されます。したがって、売り上げの集計、在庫の管理、売れ筋商品の発見などが非常に効率的にできます。これをPOSシステム(ポイント・オブ・セールス=販売時点情報管理システム)と呼び、流通業界で急速に普及しています。

 JANコード以外の身近なバーコードといえば、バーコード・ビデオやバーコード電子レンジといった製品があります。ビデオでは、テレビ番組のガイド誌に付いているバーコードをペンシル型のバーコード・リーダーで読み取って録画の予約が、電子レンジでは料理ブックに載っているバーコードを読み取って加熱法の指定ができる仕組み。これらのバーコードは、もちろんその製品だけの独自規格で作られています。

新製品の登場で再利用も

Questionバーコードの仕組みはわかりました。
それが不足するというのはどういう意味ですか?

Answer先ほど、メーカーまたは発売元は一〇万社が区別できると説明しましたね。現在JANのバーコードを使っている企業は約三万一〇〇〇社ですから、まだ七万近い余裕があります。しかし、問題は商品コード。一企業一〇万種のコード数では足りないという企業が出始めたのです。一〇万種類というと毎日ひとつずつ新製品を出しても二百七十四年かかるのですから、相当多いようにも思えます。それが足りないというのは、たとえば大手菓子メーカー。

 大手菓子メーカーは、実際、毎日のように新製品を出し続けています。それもチョコレート、ガム、キャラメル、飴、スナック菓子、クッキー、アイスクリーム、ケーキというように種類が多いのです。また、もともと移り気な子供が相手の商売。人気アニメのキャラクターをパッケージに使い、そのアニメの流行りすたりで商品が回転するなど、商品寿命が大変短いのです。さらに、クリスマスやバレンタイン・デーとなると、さまざまな新製品を出しますが、これは短期間の売り切りで、来年はまた違う商品を新発売します。年商の三割以上を新製品で稼ぐ菓子メーカーも珍しくなく、こうしたメーカーでは一〇万種のコードをすべて使い切ってしまったというのです。

Questionでは、新製品に付けるバーコードは
どうするんですか?

Answer仕方がありませんから、いままで使ったことのある商品コードをもう一度利用します。もちろん同じコードを持った異なる商品が出回れば市場が混乱しますから、メーカーでは「発売をやめてから十分時間がたっており、どこにも在庫がないことが間違いなく確認された商品のバーコードに限って、再利用している」(大手菓子メーカー担当者)と言っています。

短縮コードの不足も深刻

Question短縮コードは標準コードより短いから、
もっと大変じゃありませんか?

Answerええ。短縮コードは、たとえば煙草や化粧品など小型で、デザイン的にもバーコードを小さくする必要がある商品に使われています。そして、短縮コードの場合、国別コードが標準と同じ二桁(日本が49というのも同じ)、メーカーまたは発売元コードは四桁、商品コードは一桁しかありません。つまり、企業は一万社、商品は一〇種類しか区別できないのです。登録企業はすでに七〇〇〇社を超えており余裕もあまりなく、商品数も少なすぎるので、普遍性を持つコードとはいえない状態です。

 また、バーコードではありませんが、同じような問題が生じているのが証券コード。これは、トヨタ自動車は7203、三菱商事は8058という具合に上場企業に付けられた番号で、新聞の株式欄の社名はこのコード順に並んでいます。ところが、これは昭和二十八年に設定されたもの。その後の企業や業界の盛衰に対応できず、商業関係の企業に割り当てるコードが不足してしまい、来年秋には一二桁の新証券コードが導入される予定といいます。

システム変更には莫大な経費が

Question商品コードも、証券コードのように
新コード導入ということになるのでしょうか?

AnswerJANコードを管理している財団法人流通システム開発センターでは、国際コード協会(EAN協会。本部はベルギー)に対して、国別の追加コードの割り当てを申請して認可されました。これで、少しは余裕ができるわけですが、新しいコードを導入することには、当分の間はならないでしょう。コードが不足している会社では、「一商品一コード」という原則には抵触しますが、使っていない古いコードを再利用するのも仕方がありません。

 というのは、バーコードのようなシステムでもっとも肝心なのは、機械的、技術的な問題ではなく、ありとあらゆる商品にもれなく同一規格のバーコードを付けることなのです。そして、ひとたびシステムが動き出すと、変えるのがいちばん困難なのもこれ。今度ソフトをいじると、コンピュータ、バーコード・リーダー、バーコード印刷機など、機械的なシステムを変更しなければならず、莫大な経費がかかります。

 バーコードが最初から二〇桁もあれば、不足など起こらなかったわけですが、人間が将来を見通す力なんていい加減なものです。東京の電話番号がパンクして七桁から八桁になったのも同じで、七桁と決めたとき、誰もそんなに電話が増えるとは思わなかったのでしょう。しかし、裏返せば八桁の電話番号もバーコード不足も、わが国の経済や社会が、予測もできないほどダイナミックに変化してきた証拠。付けるコードがないほど商品があふれているのは幸せなことだと素直に喜ぶべきなのかもしれません。

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