更新:2008年8月6日
現代キーワードQ&A事典の表紙へ

ゴミ有料化

●初出:月刊『潮』1997年1月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

Question東京都が1996年12月1日から、事業系ゴミ収集の
全面有料化に踏み切りましたね。どういうことですか?

Answer「事業系ゴミ」とは、会社、商店、飲食店などの事業活動にともなって発生するゴミをいいます。事業活動には、営利を目的とするもののほか、教育や社会福祉といった公共事業・サービスも含まれます。

 これまで東京23区の事業系ゴミは、6割を都が直接収集し処理。残り4割は民間業者が有料で収集し、手数料を払って都のゴミ処理施設に持ち込んでいました。都が直接収集するゴミも、すべて無料というわけではなく、1日平均10キログラムを越える分について、1キログラムあたり28・5円の手数料を取っていました。もっとも、10キログラムを超えるかどうかは事業所の自己申告に基づいており、実際に手数料を払っていた事業所は、全体の3%程度にすぎません。23三区の事業系ゴミの6割以上が、家庭ゴミと一緒に無料で収集されていたと考えられます。

 しかし、儲けるための経済活動から出る事業所のゴミは、ゴミ収集という住民のための公共サービスにはなじまず、やはり自己処理が原則でしょう。実際、工場から出る産業廃棄物は、企業が処理費用を負担しています。そこで東京都は、23区内のすべての事業系ゴミを、原則として有料で収集することにしたわけです。

有料シールを貼って出す

Question有料といっても、
どのようにして支払えばよいのですか?

Answer料金は、有料シール(有料ごみ処理券)を購入することで支払い、ゴミには必ずシールを貼って出すというのが基本的なシステムです。

 都は23区内のスーパーやコンビニなど約7800か所の「有料ごみ処理券取扱所」と44か所の清掃事務所で、11月1日からシールを販売しています。シールには、特大(70リットル相当)、大(45リットル相当)、中(20リットル相当)、小(10リットル相当)の4種類があります。金額は、特大のみ5枚セットで1890円、そのほかは10枚セットで大が2430円、中が1080円、小が540円。1リットル54円の計算ですが、単品販売はしません。

 事業所は、このシールを購入し、ゴミにつけて出すことになりますが、その際、次のようなルールがあります。

 まず、袋で出す場合は、袋の容量に合ったシールを貼らなければなりません。30リットルの袋で出すときは、中(20リットル)と小(10リットル)を1枚ずつというように、シールを組み合わせてもかまいません。容器で出す場合も、やはり容量に合ったシールが必要ですが、ゴミの中身によって貼り方が違います。ポリ容器に、いくつかの袋に分けてゴミが入っているときは、いちばん上の袋にシールを貼ります。ポリ容器の中がすべて生ゴミというときは、ゴミのうえに新聞紙などを置き、そこにシールを貼ります。

 袋や容器に入りにくい段ボール、発泡スチロール、一斗缶については、直にシールを貼って出すことができます。段ボールは2枚で10リットル1枚、発泡スチロールは1個で10リットル1枚、一斗缶は1缶で10リットル1枚が目安です。

 忘れてはならないのは名前。シールには事業者名を書く欄がありますから、必ず会社名や店名を書き入れます。雨で流れないよう、油性のペンで書きましょう。

 なお、ゴミ集積所では、事業系ゴミと家庭ゴミが区別できるように、それぞれまとめて出します。1階が店で2階が住居という場合は、はじめから家庭ゴミと事業系ゴミを区分けして、事業系ゴミについてだけシールを貼ります。

Questionルールを守らない事業者は
どうしますか?

Answer都清掃局では、ゴミ集積所ごとに事業所台帳をつくり、その場所にシールを貼ってゴミを出すべき会社・店をチェックします。確かにそこで商売をしているのに、一度もシールを貼ってゴミを出したことがない事業所は、個別に協力を要請する方針です。

 また、シールを貼らないとか、小のシールで特大のゴミを出したという場合は、収集しないでその場に残す作戦も考えているようです。もっとも、残したゴミが悪臭を放ち、きちんとゴミを出した周囲の人が迷惑するようだと、この作戦にも限界がありますが。

経過措置など例外も

Question零細企業などに有料シールを無料で配る
経過措置がある、と聞いたのですが?

Answer今回、ゴミ収集が新たに有料化される事業所は、中小企業を中心とする56万5000事業所です。この中には、個人商店など規模の小さい事業所が多数含まれていることから、都は経済的な負担を軽くする配慮をします。

 対象となるのは、23区内に事業所があり継続して1年以上事業を営んでいる個人事業者(事業主を含め従業者数5人以下)のうち、(1)「住居併用型の生業・家業的事業所において事業を営んでいる」または「二親等内の親族だけで事業を営んでいる」、(2)年間所得金額が270万円以下である、のどちらにも該当する事業者。

 該当する事業者は、清掃事務所に確定申告書の控などを提示して申請すれば、45リットル相当のシールを最高90枚までもらえます。これはおよそ半年分だそうです。ただし、あくまで1回限りの経過措置。もらったシールを使い切ってしまえば、それ以上はもらえません。

 これとは別に、町内会、老人会、婦人会、PTAなどが道路や公園をボランティアで清掃する際に出るゴミや、町内会が主催する祭り、盆踊りなどの行事から一時的に出るゴミについては、「ボランティアシール」(無料のごみ処理券)が配られます。もらいたいときは、代表者が地域の清掃事務所に申請します。

ゴミ有料化の効果は?

Question今回の事業系ゴミの有料化は、どのような効果があるでしょう。
また、有料シールの売り上げは、何に使われるのですか?

Answer東京都は、有料化によって23区内の事業系ゴミが1割程度(約14万トン)減ると試算しています。一方、有料シールの販売で得られる手数料収入を、年間およそ190億円と見込んでいます。

 ゴミの減量効果は1割ですから、驚くほど効果的というわけにはいきません。しかし、日本の首都・東京で事業系ゴミの全面有料化が始まったという象徴的、心理的な効果は、けっして小さくないと思います。

 今後、事業系ゴミの有料化を導入する自治体はますます増えるでしょう。また、商店街やオフィスビル単位で、古紙、段ボール、発泡スチロールなどのリサイクルに取り組むケースも増えています。

 年間190億円の手数料収入については、当然ゴミ問題の改善に使われるとされています。もっとも、東京都では食糧費の杜撰《ずさん》な処理(たとえば、架空の会合をでっち上げて資金を捻出し、接待へ流用する)が問題になったばかり。手数料収入についても、都民はその使途を監視していく必要がありますね。

Question将来、家庭ゴミの有料化も
ありうるでしょうか?

Answerいま使っている東京23区のゴミ最終処分場(東京湾の埋立地)は、来年には満杯になり、その次の新処分場も15年ほどしかもたないといわれています。ゴミの減量やリサイクルの拡大は、どうしても必要です。

 そのために、家庭ゴミの有料化を真剣に検討すべき時がきていると思います。現在でも、莫大な税金を使って処理しているのですから、ゴミ処理分が確実に減税となるならば、反対する人は少ないはず。ごみ処理分を税金から切り離すには、清掃局を自治体から切り離して民営化すればよいのです。「ゴミを出せば出費がかさむ」というシステムをつくる──これがゴミ問題の解決を図る決定打だと思います。

「現代キーワードQ&A事典」サイト内の文章に関するすべての権利は、執筆者・坂本 衛が有しています。
引用するときは、初出の誌名・年月号およびサイト名を必ず明記してください。
Copyright © 1997-2015 Mamoru SAKAMOTO All rights reserved.

Valid CSS! Valid XHTML 1.0! Another HTML-lint がんばりましょう! 月刊「潮」 坂本 衛 すべてを疑え!!

現代キーワードQ&A事典の表紙へ
inserted by FC2 system