更新:2008年5月31日
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グリーン購入法

●初出:月刊『潮』2008年4月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

2000年に制定

Question「グリーン購入」という言葉を耳にしました。
どんな意味ですか?

Answerいま、人類の排出するCO2が主な原因と考えられている地球温暖化が、世界的な大問題になっています。温暖化防止のため、省資源、省エネルギー、水力・風力・地熱・太陽光・原子力など化石燃料(石油・石炭・天然ガス)以外のエネルギーへの転換、家電・自動車・建設資材・食品・容器包装はじめ各分野でのリサイクル、CO2の吸収源である森林の保全整備などの環境対策が推進されていることは、よくご存じでしょう。

 「グリーン購入」は、そんな環境対策の一つで、「環境への負荷(マイナスの影響)ができるだけ少ない商品やサービスを率先して購入すること」を言います。海外でも「環境保護の立場から望ましい購入」を意味するEPP(Environmentally Preferable Purchasing)という言葉があり、積極的に行われています。

 日本では1996年2月、グリーン購入に取り組む企業、行政機関、民間団体などが「グリーン購入ネットワーク」(GPN)という組織を発足させました。これは、グリーン購入のネットワークづくりや、グリーン購入についての情報収集・啓発を通じて、環境への負荷が少ない商品やサービスの市場を拡大していく活動を続けています。

 2000年には、公的機関が率先してグリーン購入・調達を推進するために、グリーン購入法(正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)が制定されました。

 この法律では、国は「環境物品等を選択するよう努めなければならない」、地方自治体は「環境物品等への需要の転換を図るための措置を講ずるよう努めるものとする」、企業や国民は「できる限り環境物品等を選択するよう努めるものとする」という言い方で、それぞれグリーン購入を推進すべきと規定しています。「環境物品等」とは、環境への負荷を小さくする製品やサービスのことです。

購入の基本原則

Questionグリーン購入をするには、
どんなことに注意すべきですか?

AnswerGPNは「グリーン購入基本原則」という考え方や行動の基本的な指針をまとめています。この項目に沿って解説しましょう。

 【1】必要性の考慮……まず、ものやサービスを買う前に必要性をよく考えます。持っている製品の修理・リフォームや共同利用、レンタルなども検討します。やはり買う必要があるという結論が出ても、数量をできるだけ減らすようにします。

 【2】製品・サービスのライフサイクルの考慮……資源採取、製造、流通、使用、リサイクル、廃棄という製品・サービスのライフサイクル全体を視野に入れ、それぞれの段階での多様な環境負荷を考えたうえで、購入するようにします。

 製品については、とくに、(1)環境汚染物質等の削減(例・フロンを使わない冷蔵庫)、(2)省資源・省エネルギー(例・燃費がよい車)、(3)天然資源の持続可能な利用(例・適切に管理された森林産の木製品)、(4)長期使用性(例・耐久性に優れた家具)、(5)再使用可能性(例・ビールびん)、(6)リサイクル可能性(例・ペットボトル)、(7)再生材料等の利用(例・古紙配合率が高い再生紙)、(8)処理・処分の容易性(例・セロファンを使わない窓付き封筒)についてチェックします。

 【3】事業者取り組みの考慮……環境負荷の低減に努める事業者から製品やサービスを優先して購入するようにします。事業者については、とくに、(1)環境マネジメントシステムの導入、(2)環境への取り組み内容、(3)環境情報の公開をチェックします。

 【4】環境情報の入手・活用……製品・サービスや事業者に関する環境情報を積極的に入手・活用して購入にします。製品に貼ってある公的機関、第三者機関、事業者による環境ラベル表示、製品カタログやパンフレットの情報、ホームページの情報などを検討するようにします。

 政府の閣議決定「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」のトイレットペーパーの項には「【判断の基準】古紙パルプ配合率100%であること」「【配慮事項】製品の包装は、可能な限り簡易であって、再生利用の容易さ及び焼却処理時の負荷低減に配慮されていること」とあります。同方針には、国が購入するさまざまな製品の判断基準や配慮事項が記してあり、参考になるかもしれません。環境省のホームページ(参考リンク)で読むことができます。

消費者にできること

Question製品ライフサイクルの考慮なんて、
なにやら面倒くさそうですが……。

Answer確かに、ある製品の資源採取段階、製造段階、流通段階における環境負荷など、普通の人には簡単にはわかりませんね。これはもっぱら、製品を作る企業が考え、わかりやすく公表すべきです。

 しかし、グリーン購入では、私たち消費者にもできることがたくさんあります。製品を買うとき、丈夫で長持ちしそうな作りだ、リサイクルに関する法律やシステムがある、紙とプラスチックにすぐ分かれるから捨てるとき楽だといったことは、簡単に気づくはず。ボールペンを10本買うときは2本と交換芯8本にすれば安いとか、洗剤やシャンプーも一度ボトル入りを買えば後は詰め替え用の袋入りを買ったほうが安いというのも常識でしょう。ただ「安い」だけでなく「資源の節約になる」と気づけば、それがグリーン購入の第一歩なのです。

 電気店では、これまでの白熱電球に替えて「電球形蛍光ランプ」を盛んに推奨しています。ちょっと時間を割いてパンフレットやパッケージを読めば、白熱電球の数分の1の電力で明るさはほぼ同じ、寿命は数〜10倍程度とわかります。価格は高くても、長期的には蛍光ランプのほうが明らかに得です。

 資源エネルギー庁によると、家庭用電気機器の消費電力の割合は、エアコン25%、冷蔵庫・照明各16%、テレビ10%程度。以上については、価格と電気代を慎重にてんびんにかけて製品を選ぶべきです。少々値が張っても、電気代の節約分で十分もとを取れるケースが多いことに注意してください。

 もちろん、せっかくグリーン購入しても環境への負荷が大きい使い方をしては本末転倒です。こまめにスイッチを切るといった生活習慣もお忘れなく。

購入法の見直しも

Question再生紙の偽装が発覚しましたが、
グリーン購入への影響は?

Answer最低で最悪の影響があったというべきです。先に紹介した政府の基本方針では、コピー用紙の項に「【判断の基準】古紙パルプ配合率100%かつ白色度70%程度以下であること」とあります。国はコピー用紙を買うとき、この条件に合う製品を選ぶ努力をする法的「義務」があるのです。

 ところが、日本の大手製紙会社が、古紙パルプ配合率100〜70%とし「地球にやさしい」エコマークを付けていた再生コピー用紙の多くが、はるかに低い配合率しかない偽装品だった(0%のものすらあった)ことが露呈しました。

 製紙各社が作る年賀ハガキの古紙配合率もデタラメで、日本郵政と「古紙配合率40%」で契約した日本製紙の配合率は、なんと1%でした。「再生紙だから」「マークが付いているから」と積極的に製品を買った消費者にとっては、詐欺同然のインチキ行為で、厳しく糾弾されなければなりません。

 今回の不祥事で、企業はまさかウソはつかないという「性善説」に基づき、製品の環境への負荷を自主的に申告させ、その情報にしたがって国・自治体・企業や国民に購入を勧めるというグリーン購入の仕組みが、根本的に揺らいでしまいました。製品・サービスの環境負荷に関する公開情報にウソや偽りがあった場合の罰則規定を設けることも含めて、グリーン購入法の早急な見直しが必要です。

参考リンク

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