更新:2006年9月30日
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オレオレ詐欺

●初出:月刊『潮』2004年?月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

1日平均25件、被害額5000万円

Questionオレオレ詐欺が猛威を振るっていると聞きます。
これについて教えてください。

Answerいわゆる「オレオレ詐欺」とは、「オレだよ、オレ」と息子や孫など身内からの電話と信じ込ませ、「交通事故を起こしてしまった。大至急カネが必要だ」というようなウソをいい、銀行口座に振り込ませるなどしてカネを騙し取る詐欺《さぎ》のことです。

 2003年から目立って増え、2003年1年間で認知件数(事件があったことを警察がつかんだ件数で、未遂も含む)が6504件。被害総額は約43億円。

 2004年になっても毎月増え続け、1月から9月までに認知件数1万1004件(既遂6858件、未遂4146件)。被害総額は、129億3476万円にも上っています。これは、毎日25人ほどが引っかかり、毎日5000万円近いカネを騙し取られてしまっている計算です。1件あたりの被害額は190万円に迫ります。

 オレオレ詐欺が登場した当初は、お年寄りのところに一人が電話してきて「孫」や「息子」を装う場合が多かったのですが、最近の事件は、より大がかりで複雑になってきました。

 たとえば、身内以外に「弁護士」「保険会社社員」など第三者を装った者が、代わるがわる電話に出てくる(グループ犯で、芝居の手が込んでいる)。交通事故の現場からの電話を装って、サイレン、「被害者」の泣き声、事故処理の音などが聞こえる(同)。「警察官」を装って、身内が交通事故を起こしたなどと示談金《じだんきん》の振り込みを指示する(本人の声を聞くことができない)。身内の本当の名前や職場を知っている(名簿などで事前に調べてある)、など。

 このように手口が一段と巧妙になったため、オレオレ詐欺についてニュースなどで見聞きし、気をつけなければと思った人でも、騙されてしまいます。

こんな手口にご注意!!

Questionオレオレ詐欺の主な手口には、
どのようなものがあるのですか?

Answer大きく分けて、(1)電話で「オレだよ、オレ」と息子や孫など身内を装う手口、(2)警察官、弁護士、大学教授などを名乗る手口、(3)やくざなどをかたり監禁や誘拐などを装う手口があります。

 (1)の騙し言葉は、「車で人をひき、ケガさせてしまった。このままでは業務上過失致傷で警察に捕まってしまう。物損事故扱いにしてもらうのに示談金が必要だ」、「借金の連帯保証人になってしまった。このままだと会社にまで取り立てが来て、クビになってしまう」、「彼女を妊娠させてしまった。どうしても中絶費用がいる」など。

 (2)の騙し言葉は、「自分は警察官だが、ご主人が電車で痴漢行為をして、いま警察に来ている。相手の女性は示談で収める意向があり、示談金さえ支払えば、すぐに帰れる」、「(警察官、弁護士、保険会社社員などが複数登場して)息子さんが車で死亡事故を起こした。このままでは業務上過失致死で勾留される。釈放するには示談金が必要だ」、「自分は大学病院の教授○○だが、息子さんが投薬を間違えて患者さんを死亡させてしまった。医療ミスだ」など。

 (3)の騙し言葉は、「××組の者だが、赤信号で渡る息子さんを避けようとして、親分のベンツを壁にぶつけてしまった。修理代を出してくれ」、「息子さんにカネを貸したが返してもらえない。このままだと腎臓を売ってもらうか、外国に売り飛ばすかだ」など。

 いずれにせよ、カネが必要だと信じ込ませ、振り込み先の銀行、郵便局などの口座番号を教えてきます。

 必要なカネの名目は、「交通事故の示談金」(58%=2004年1〜9月。以下同じ)、「借金の返済」(27%)、「妊娠中絶の手術代」(6%)、その他(9%)。その他は「仕事上のミスの穴埋めや弁償」「会社の資金繰り」「刑事事件(強姦、痴漢、窃盗、傷害、器物損壊ほか)の示談金」などです。

 (1)は自分から名乗らないことが多く、「○○か?」「そうだよ」というオレオレ詐欺の典型的パターン。

 (2)は事前に調べて名前を知っていることがあります。何人かが次から次へと電話に出る、警察官や弁護士など専門家役は落ち着いた話しぶりで専門用語を駆使する、本人(身内)役や被害者役は泣きじゃくったり大慌てだったりする、本人は電話に出られない状態とされる場合も多い、効果音が聞こえる、などと大がかりで手が込んでいるのは、(2)が多いようです。

 (3)の電話に本人が出たときは、これは監禁や誘拐ですから、110番通報しなければなりません。

被害にあわないためには

Questionオレオレ詐欺に引っかからないためには、
どんなことに気をつければよいでしょうか?

Answer第一に、たとえ身内が本当に交通事故を起こし人の命を奪ってしまったとしても、「その日のうちに、どうしてもおカネが必要」ということは、世の中にはありません。

 示談金にせよ借金の返済にせよ中絶費用にせよ、明日に回してかまわないのです。それが世の中の「常識」です。家族でよく話し合ったり、離れて暮らしているお年寄りと話し合ったりして、そのことを全員の頭にたたき込む必要があります。

 第二に、その日のうちに絶対おカネを支払わなければならないことはないのですから、仮に払うつもりがあったとしても、本人とゆっくり話をした後にすべきです。おカネが必要という第三者からの電話があったら、電話を切った後、必ず本人や家族と連絡を取りあって、事実を確認しなければなりません。

 第三に、本人を名乗る電話でも、大慌てで早口だったり、耳があまりよくなければ、確かなことはわかりません。本当に自分の孫かどうか、孫しか答えを知らない質問をしてみる(「去年おばあちゃんとどこに旅行したか、覚えている?」とか)とよいかもしれません。長く会わない孫から電話があれば、孫の親(自分の息子や娘)に「あの子がこんなことをいって寄こしたけど」と電話で確かめるのが当たり前。近所の人や親戚や警察に相談してもよいでしょう。

 第四に、警察官、弁護士、保険会社社員その他どんな職業の人も、電話1本で何十万円ものおカネを支払ってくれと要求したり指示したり仲介したりすることは、絶対にありません。そのような電話があったら必ず相手の所属を聞き、「こちらからかけ直す」と電話を切ってください。NTTの電話番号案内で調べてかけ直せば、そんな人物はいないとわかります。普通の人がまるまる一か月働いて得るような金額を、顔も見せずに受け取りたいといっている時点で、その者は詐欺師か犯罪者に決まっています。

 第五に、銀行や郵便局で大慌てでカネを引き出そうまたは振り込もうとしている人を見かけたら、オレオレ詐欺にあっているのかもしれません。すぐに金融機関の窓口に話してみてください。

家庭の主婦もターゲット

Questionやはり、ひとり暮らしのお年寄りが
被害にあってしまうことが多いのですか?

Answerいえ、そうでもありません。まず、被害者の76%が女性です。その内訳は、50代が23%、40代が15%、60代が12%となっています。

 被害者にはお年寄りも少なくありませんが、孫がまだいないような家庭の主婦も、オレオレ詐欺の主なターゲットになっていることがわかります。その場合は夫や息子の交通事故その他の示談金・弁済が名目になっているものと思われます。

 オレオレ詐欺の電話がかかってくるのは、たいてい午前10時〜午後2時頃。これより遅いと金融機関が閉まり、入金が翌日になって、一晩かけて確認する時間が生じてしまうからです。その時間、高齢者だけでなく家庭の主婦も家にいるでしょう。他人事と思わず、くれぐれもご注意ください。

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