更新:2006年9月30日
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リフォーム詐欺

●初出:月刊『潮』2005年9月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

リフォーム詐欺とは?

Questionリフォーム詐欺が急増中と聞きました。
これについて教えてください。

Answer「リフォーム」は「改良」や「作り直し」という意味です。古くなった服に手を加えて、新しいものに仕立て直すこともリフォームですが、最近の日本で「リフォーム」といえば、古くなった住宅を改良したり補修したりする「住宅リフォーム」を指すことが多くなりました。

 テレビや雑誌で、狭く使い勝手の悪い台所をあれこれ工夫し安くリフォームするといった番組や記事が、よく登場するのにお気づきでしょう。

 家を1軒建てるには土地代を除いても1000万円とか2000万円、あるいはそれ以上かかりますから、普通の人が一生に2度も3度も出せる金額ではありません。けれども、たとえば10年に1度、1ケタ安い100万円や200万円程度で改良・補修し、古い家を長持ちさせることができるのであれば、これは理にかなった話です。

 バブル経済の崩壊以降、新しくゼロから新幹線を引くのでなく、代わりに在来線に特急を走らせようというように、世の中全体が倹約ムードですから、リフォームの考え方は時代にも合っています。

 しかし、そんなリフォームばやりにつけ込み、家を訪問して形だけの調査をし「家の基礎にひびが入っている」「土台が腐っている」「このままでは、ちょっとした地震でも倒れてしまう」などと大ウソをいって、おざなりな工事や必要のない工事、過剰な工事などをし、法外な金額をだまし取る住宅リフォーム詐欺が急増しています。

 とりわけ悪質なのは、一人暮らしや夫婦だけの世帯のお年寄り、認知症(いわゆる老人ぼけ)のお年寄りなど、相談相手がいない人や判断力に乏しい人を集中的に狙ってしつこく訪問し、無理やり契約を取ってカネを巻き上げるケースです。

 国民生活センターが2005年7月20日に発表した調査結果によると、住宅リフォーム工事についての相談件数は、全国で年間1万件近くに上っています。

リフォーム詐欺の手口

Questionリフォーム詐欺は、具体的には
どのような手口なのですか?

Answerまず「屋根の点検で近所に来た(地域一帯で無料点検をしている)。お宅も見せてもらえませんか?」などといって家に上がり込み、調査や点検をします。そして「このまま放っておくと大変なことになる」といい、床・天井・屋根・壁などの補強工事を熱心に勧めます。

 その場で見積書を書き、契約書への署名を求められれば、ちょっと判断力が鈍っている一人暮らしのお年寄りが応じてしまうこともあるのです。すぐには返事できないと断っても、入れ替わり立ち替わり営業マンがやってきて、言葉巧みに契約を取ってしまいます。

 事前に住宅調査などの名目で地域一帯に電話をかけ、家族構成などを聞き出し、高齢者世帯や一人暮らし世帯を集中的に狙う場合もあります。倒産したリフォーム会社の顧客リストを入手し「10年前に外壁を修理させてもらった。その後いかがですか」と口実を作って訪問する場合もあります。

 悪徳業者は、簡単に工事の契約が取れた騙しやすい相手だと見なすと、最初の工事を丁寧に(場合によっては安く)やって安心させ、「今回の工事で新しい欠陥が見つかった。放っておけません」などといって、次から次へと集中攻撃をかけてきます。

 業者の社内文書に「親の遺産あり」「まだまだいける」などとメモ書きされ、財産をむしり取るターゲットにされてしまうのです。典型的な被害の実体を、いくつか紹介しておきましょう。

リフォーム詐欺への対策は?

Question身近に高齢者がいるので心配です。
リフォーム詐欺への対策は?

Answer第一に、未知の訪問者を一切、家に上がらせないことです。家に上がり込む営業マンはプロですから、健康や家の老朽化など高齢者の不安を巧みに煽って契約させるくらいは朝飯前。自分は絶対に騙されないと思っていた人が何人も引っかかっており、認知症の高齢者であれば、契約に持ち込めないほうが不思議なくらいです。

 ですから「一度、家に上げたらおしまい」と考えて、上がらせないに限ります。電話やインターホン越しに、しつこくいってきたら「借家だからリフォームできない」といえばよいのです。

 第二に、高齢者の不安を周囲が取り除く手立てを講じることです。たとえば「地震で家が心配だ」と年金暮らしの親がいうなら、子どもたちが信頼できる業者を頼んで工事をすればよいわけです。

 お住まいの地方自治体が、木造家屋の無料耐震診断、登録工事業者の斡旋、耐震工事費用の補助制度などを設けているかもしれません。市役所や区役所の建築・防災窓口に問い合わせてください。良質業者のインターネット検索サービス「リフォネット」も役に立ちます。

 第三に、一人暮らしや夫婦だけの高齢者家庭には親族や近所の人が気を配り、何か変わったことがないかチェックすべきです。

 訪問販売には、契約書を受け取った日から8日間は解約できる「クーリング・オフ制度」が設けられています。2004年秋の特定商取引法の改正で、業者がウソをついたり脅してクーリング・オフを妨害した場合、8日間という期間に関係なく解約できるようになっているのです。

 ということは1週間に一度、訪ねたり電話で様子を聞くだけで、万一契約済みだったとしても解約できるわけです。認知症のお年寄りの家に通う介護ヘルパーが、見慣れない契約書に気づき(本人に聞いても覚えておらず)、クーリング・オフで解約したというケースはよくあります。

 第四に、認知症などで判断能力が不十分な人の代わりに、家庭裁判所が選ぶ成年後見人などが財産管理や契約などを行う「成年後見制度」を利用することも考えられます。

リフォーム以外にもご用心

Question訪問リフォーム以外にも、
高齢者が狙われる詐欺はあるのでは?

Answerその通りです。国民生活センターに寄せられた相談のうち、70歳以上の高齢者が契約当事者だった相談件数は、2004年度に12万4831件と、4年間でおよそ3倍に急増しています。

 高齢者の被害が多い販売方法には、家を訪問し上がり込んで強引に勧誘する「家庭訪販」、特設会場で講演したり商品を無料で配った後に高額なものを売りつける「SF商法」(催眠商法)、床下などを点検し「このままでは危険だ」と不安を煽って契約させる「点検商法」、一度契約した人の名簿によって(業者間で回すなどして)次々と商品を売り付ける「次々販売」などが知られています。

 売りつけられる商品やサービスは、ふとん類、健康食品、浄水器、家庭用の電気治療器具といった健康関連や、屋根・天井・床その他の補修、床下の換気扇、シロアリ対策など住宅関連が目立ちます。

 騙されないようにお年寄りによく話し、不審に思ったらすぐ消費者センターなどに相談してください。

参考リンク

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