更新:2008年5月31日
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レジ袋有料化

●初出:月刊『潮』2007年4月号「市民講座」●執筆:坂本 衛

年間300億枚

Questionレジ袋有料化のニュースを聞きました。
どういうことですか?

Answerレジ袋とは、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、その他の小売店などで買い物すると、レジで商品を入れてくれる乳白色や半透明の袋のこと。ポリエチレン製で、軽くて強く、耐水性や耐寒性にもすぐれた袋です。

 石油から作るポリエチレンは、第二次大戦中は軍事用の貴重な電気絶縁材でしたが、その後の石油化学工業の発展で安く大量に入手できるようになりました。融かしてガム状にした原料から、繊維(ひも)、フィルム(薄膜)、成型品(型に注入した加工品)のどれでも簡単に作ることができます。

 袋にするには、原料を環状に押し出し、高気圧の空気を送り込んで膨張させ長い筒状の薄膜を作り、必要があれば印刷してから、ところどころでシーリング(熱で接着)とカット(切断)をします。工場の「製袋機」と呼ばれる機械からは、1分間に何百枚ものレジ袋がはき出されてきます。

 昔は八百屋などで買い物すると新聞紙に包んだり紙袋に入れてくれたものですが、今では何でもかんでもレジ袋に入れてくれます。とても便利なので、現在では日本全体で年間推計300億枚ものレジ袋が使われています。

 ところで、300億枚ということは、1枚10グラムとして毎年30万トンのレジ袋を消費する計算です。商品の持ち帰り用途だけのレジ袋をそんなに使うのはムダでは、という声も出てきました。仮に国内のレジ袋をすべてなくせば、石油の消費量を年間約56万キロリットル(ドラム缶280万本分)減らすことができるとの試算もあります。

 最近では、暖冬や世界各地の集中豪雨、洪水などで異常気象に関心が集まり、地球温暖化が心配されています。石油消費量を減らし温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を抑制しなければならないと、世界中で考えられています。

 そこで、身近なところでレジ袋がクローズアップされ、これを減らすには有料化したらよいのではないかという話になってきたわけです。ヨーロッパでは、レジ袋は有料が当たり前とされています。

 また、小売業者にレジ袋などの削減努力を義務づける改正容器包装リサイクル法が2007年4月から施行されることも、レジ袋の有料化が検討されはじめた背景の一つです。

1枚5円で販売

Questionレジ袋の有料化については、
どんな取り組みがありますか?

Answer一部スーパーマーケットの一部店舗で、半ば実験的に始まっています。

 東京・杉並区に本社がある中堅スーパーのサミットは、区内の成田東店でレジ袋を有料化する実証実験を始めました。レジ袋が必要な客には1枚5円で販売します。サミットでは2007年3月末までに、買い物袋(マイバッグ)を持参する客の比率を、これまでの30%前後から60%に引き上げたいとし、結果が良好なら他店への拡大も検討するとしています。

 杉並区は環境問題に熱心で、レジ袋1枚につき5円を課税して環境目的に使う「レジ袋税」を2002年に制定しました。ただし、反対の声も強かったため、区では税収が目的ではなくレジ袋削減が目的だと施行を見送り、区民にマイバッグ持参を呼びかけてきました。しかし、思うように成果が上がらなかったので、今回の実験に至ったのです。

 関西では、京都市の「ジャスコ東山二条店」が、全国チェーンの大手スーパーとしては初めてレジ袋有料化に踏み切りました。こちらも1枚5円です。ジャスコを経営するイオンは、客の反応や削減効果などを注視しながら、仙台、横浜、名古屋市の一部店舗にも有料化を拡大する方針で、2010年にはマイバッグ持参率を50%に高めたい考えです。大阪市のイズミヤも一部店舗で有料化します。

 なお、消費税導入時の1989年にコスト削減・価格据え置きの一環としてレジ袋を有料化(1枚6円)した東京の「オーケー」、品目を絞り込んだ安値販売でもともとレジ袋が有料(1枚10円)の大阪の「サンディ」など、レジ袋を減らす目的でなく有料化しているスーパーもあります。

 そのほかのスーパーは様子見するところが多くなっています。レジ袋を有料化すると客が他店に移るのではと、警戒する声も少なくありません。

コンビニは無料のまま

Questionコンビニで有料化実験をしているところは
ないのですか?

Answerありません。コンビニエンスストアはレジ袋の有料化には反対の立場です。

 というのは、コンビニはまず、家庭の主婦が定期的に買い物するスーパーと客層が違います、帰宅途中のサラリーマンやOL、学生をはじめ、出先で飲み物や携帯の電池などが必要となって飛び込みで買う客が多いのです。この人たちに、つねに買い物袋を持参してくれとは頼みにくいでしょう。

 また、売っているもののうち、弁当、おにぎり、おでんなどにはレジ袋が必要です。冷たいペットボトルや熱くした飲料缶も、素手で持ってくれと渡すわけにはいきません。

 ですから、日本フランチャイズチェーン協会に加盟するコンビニ12社は2006年6月から、レジで買い物客一人ひとりにレジ袋が必要かどうかを確かめる(明らかに必要なものは確かめないで袋に入れる)ことにしています。業界では2010年度までにレジ袋を2000年度と比べて35%削減する目標を立てています。

 百貨店も、レジ袋の有料化には反対です。スーパーなどより高級品を売っており、より高いサービスを提供していると差別化を図りたいからです。ただし、多くの百貨店がオリジナルの買い物袋を「エコバック」などと称して販売しています。

「ムダを省く」習慣づけ

Questionうちではレジ袋をゴミ袋に使い、
ムダにはしていないのですが……。

Answerそんな家庭が少なくないでしょう。小さな袋は使いにくいですが、中〜大サイズのものは各部屋のゴミ箱にセットする、不燃ゴミ袋に使うなど、再利用している家庭が多いと思います。それを有料化するのはどうかという疑問は、あって当然です。

 レジ袋の費用は、店が赤字覚悟で負担しているわけではなく、もともと消費者が支払う価格に含まれます。その原価は1枚2〜3円とされますから、一律5円で売れば実質値上げとなり、消費者は不便なうえに余計なおカネを取られることになりかねません。ですからレジ袋を有料化した店は、こうしたコスト計算を公開し、値上げ分が生じれば商品価格を下げるなり社会貢献に回すなりしている(便乗値上げはしていない)と、きちんと宣言すべきです。

 また、仮にレジ袋が店から家まで使っただけですべて捨てられゴミになるとしても、レジ袋廃止で減るゴミの量は限られます。日本で一般家庭から出るゴミの総量(ゴミ総排出量)は、平成14年度と15年度がたまたま同じ数字で5161万トン。最近でもっとも多かったのは平成12年度の5236万トンです。企業その他から出る産業廃棄物の総量は年間4億トン近くと、ケタが一つ違います。

 レジ袋を全廃して減るゴミの量は30万トンですから、単純にゴミの量だけを減らしたいなら、レジ袋以外に一般家庭が出すゴミや企業が出す産業廃棄物を減らしたほうがよいことは明らかです。家庭ゴミでとくに手を着けるべきなのは、やはり過剰包装や過剰容器(食品トレーなど)でしょう。

 とはいえ、必要のないレジ袋を使わずに買い物袋を持参することは、たいへん結構なことです。とりわけ人びとに「ムダを省く」という習慣づけをする効果は大きいと思います。私たちも、レジで要らないものは要らないとハッキリ口にして、ゴミを少しでも減らす努力をすべきですね。

レジ袋を有料化している主なスーパー・生協

会社・団体名
(本社・本部所在地)
販売額導入時期実施店舗
イオン(千葉市)5円2007年1月ジャスコ東山二条店(京都市)
サミット(東京都)5円2007年1月成田東店(東京都杉並区)
オーケー(東京都)6円1989年首都圏全店
ビッグ・エー(東京都)10円1979年全店
カスミ
(茨城県つくば市)
5円2004年一部店舗
サンディ(大阪市)10円1981年全店
日本生活協同組合連合会(東京都)5〜10円1980年代一部店舗
イズミヤ(大阪市)5円2007年3〜4月予定光風台店(大阪府豊能町)、桂坂店(京都市)

作成:「潮」編集部

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